灰色の指先
彼の性格はひどい無口
声の出し方を忘れたよう
20歳まえまでは誰にも会わずに
いつも壁のそばに居た
彼の職業はプレス加工
アルミニュームを曲げてのばす
指先の色もいつしか変わって
とうに指紋はなくしてた
灰色の指先で毎日をなぞっても
数えても重ねても仕事場は流れ作業
彼が恋したのは街の女
彼を受けいれた ただの女
悲しみも喜びもない時間が
遠いゆるやかな記憶
街の夕暮れにイルミネイション
彼は人ゴミにとけてしまい
この街で205人が今日生まれ
203人の死亡
灰色の指先で明日の日を探しても
夢見ても願っても仕事場は流れ作業
カテゴリ : 1978「white」 登録日 : 2006年03月01日 23:57