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2008年10月20日
展覧会「ヴィルヘルム・ハンマースホイ」
「ヴィルヘルム・ハンマースホイ-静かなる詩情-」展 国立西洋美術館 2008年9月30日~12月7日
この展覧会は「デンマーク家具プロモーションセンター」のメールマガジンで知った。
このセンターとは、“デンマークの家具やインテリア製品をご紹介す ることを目的に、デンマーク大使館商務部が運営して”いるものだそうで、だから、最初はインテリア関係の展覧会かと思った。
だが、内容を読み、また、つい最近朝日新聞の「水曜アート」で紹介されたので、19~20世紀のデンマークの画家と知った。(Vilhelm Hanmmershoi)
86枚もの本人の作品と20枚ほどの同時代で影響を受けた画家の作品が来日している。生涯コペンハーゲンに住み、自宅の室内の絵が多い。同じ主題の絵をくりかえし描いたものもある。
室内には家具やピアノや置物やストーブが見られるが最小限である。ある室内をそのまま描くのではなく、描きたいものだけを描いているのだ。白い扉や陰影が落ち着きと、逆にいささかの不安を感じさせる。室内にいる人物は画家の妻で、多くは後姿。何をしているの?どこへ向かっているの?見るものを絵の奥へ誘う。着ている服はほとんどが黒、全体に抑えた色調。
多分初期のものだが、真正面から妻だけを描いた一枚がある。その眼差しはうつろだ。見ているのは自分の内側なのだろうか。また、三人の女性を描いた一枚、彼女たちは一緒にいながら、その視線は交錯しない。
短い解説がたまにあって、理解を助けてくれる。絵というものをどの程度理解できるのかわからないが。そのひとつに、どの絵だったか、リルケが大変気にいって、コペンハーゲンまで画家に会いに行ったとある。
それを読んで、腑に落ちた。この絵から感じられる孤独感、それも都会の。また、にもかかわらず、そこに射すかすかな光。リルケ、読んでから何十年も経つ名だった。
同じ上野で開催されている“フェルメール”展も人並みに観たが、わたしはこのハンマースホイの絵たちに深い共感を覚えた。展示の仕方、ひとがあまり多くないことなど、観る環境の影響もあるかもしれないが。
ピアノの上に描かれているロイヤルコペンハーゲンの大きなパンチボウルの実物が、もっと後年のものだが展示されていて、興味深かった。
夜間開館の金曜日に訪れた国立西洋美術館は、入口のレリーフがライトアップされ、エントランスも美しい。チラシ類の中に「建築探検マップ」があって、ル・コルビュジエのこの建物の詳細を紹介している。
ハンマースホイ展は地下なので、吹き抜けの入口を見なかった。会期中にもう一度訪れて、あの気持ちのいい場所に滞在し、常設展も見よう。
向かいの東京文化会館も前川国雄の名建築。お昼はあのレストランでなどと再訪の楽しみを抱いて帰った。
訪問日 2008年10月17日(金)17時過ぎ。
観客はそれほど多くなく、作品と1対1で見られた。
2008年10月19日
展覧会「百寿を超えて」で奥村土牛を観る
「百寿を超えて」展 山種美術館 2008年9月13日(土)~11月3日(月)
100歳を超えるまで活躍した3人の日本画家、奥村土牛、小倉遊亀、片岡珠子の作品展。
特に奥村土牛の作品が多いときいて、あしを運んだ。夏に長野県佐久の美術館で観て以来、心を惹かれていた。
チケットにもなっている代表作「醍醐」は桜。
京都醍醐の枝垂桜が、太い幹を中心にふわりと垂れ下がる様が描かれている。向こうに白壁がある。写真なら、桜の木を丸ごと写すだろうに、根元から途中までしか描かれていない。がっしりとした幹が花の妖艶を感じさせる。
会場で販売している冊子に、「昭和38年」に見て「写生をし、何時か制作したいと考えて・・」「昭和47年、今年こそと思って」行き制作したとある。10年もの間、最初の印象を温めていることに、画家の心を思った。
NHKの新日曜美術館で取り上げていた「門」も同様、時を経て制作したらしい。姫路城の門のひとつ、「は」の門だという。
門のみを描くのではなく、開いている部分から向こうの土塀をも描いている。古びた木材の様子、外にある塀の屋根など、丹念にリアルに描かれているのに、門の全景はわからない。
この構図によって、とてもモダンな印象を受ける。そんなところが好きなのかもしれない。
購入した「奥村土牛ー作品と言葉」は小さな冊子でたしか何百円かだった。重い図録よりこのような冊子はありがたい。絵は小さいが色はなかなかよいし。
山種美術館は初めて訪れた。九段のお堀も近くいい場所にあった。
地下鉄からの途中に、有名なうつわの店「花田」があり、素敵な器がみられます。
訪問日 2008年10月11日(土)
投稿者 きさら先 : 20:23