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2004年10月17日

映画「誰も知らない」 04/10/15

製作: 「誰も知らない」製作実行委員会
監督・脚本・プロデューサー:是枝裕和
キャスト:柳楽優弥(明=兄) 北浦愛(京子=妹)木村飛影(茂=弟) 清水萌々子(ゆき=妹) YOU(母) 韓英恵 寺島進 遠藤憲一 木村祐一 平泉成 串田和美 岡元夕紀子 加瀬亮 タテタカコ(歌=「宝石」も) その他


 映画館で映画を観ることの利点は何か。大きな画面?音響?邪魔がはいらないこと?私は館から出たときの、日常との落差だと思う。一瞬自分の居場所を見失う、その感じ。いい映画にはそれがある。
 「誰も知らない」については「辛いから観ないほうがいい」ときいていた。でも、急に時間が空いて、しかもたまたままだ上映している館があったので入った。ハンカチを用意して。なぜ辛くなる映画を作るのだろうかという疑問ももって。

 実際の事件に基づいた映画だという。12歳の明を頭に4人の子供たちだけで、アパートに置き去りにされ、しかも下の3人は存在を隠して部屋の中だけで暮す。いちばん小さいゆきは3歳ぐらいか。置き去りにした母親に悪気はない。会えば子供たちを喜ばせ、彼らも母は大好きだ。学校へ行く必要はないという母に問題はあるだろう。しかし、映画はそんな追求はしない。子供たちの状況を淡々と描く。音も現実音が多く、ドキュメンタリーのようだ。

 無邪気な母と4人の子供との生活はそれなりに成り立っていた。上の2人はかいがいしく家事をこなす。しかし、母が出て行ってから日が経つにつれ、生活は崩れてくる。明は同年齢の友だちとの遊びを求めて弟妹をなおざりにし、京子は家事に投げやりになる。
 それはそうだろう、だって子供だもの。大人でも(あるいは大人なら)壊れる状況だ。しかしある日、明は弟妹を外に連れ出す。水道もガスも止められての生活の中で、なんと楽しそうなこと!ほっとする場面だ。
 いつも公園にいて学校へ行かない中学生の少女(韓英恵)との交流、こっそり食物をもらえるコンビニ、かすかな外界とのつながりはある。しかし、もし何かあったら、と心配しながら見守る。そして、何か、は起こってしまう。

 あり得ない偶然とか、すれ違いとか、そんな演出はまったくない。涙を誘う場面も慎重に避けられている。ハンカチは必要なかった。
 この子供たちをなんと表現したらいいのだろう。どんな形容詞もウソになる気がする。ただ記憶するのみである。

 映画館を出、しばらく立ち止まって自分の位置を探る。向かいに美術館が見える。入る前にはついでに開催中の有名美術館展もと思っていたが、もうその気はない。
 知らない街のような渋谷の坂を上りながら、急にこみあげてくるものがあった。

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「誰も知らない」公式サイトhttp://www.daremoshiranai.com/
是枝裕和公式サイトhttp://www.kore-eda.com/

観た映画館:シネ・アミューズ イースト/ウエストhttp://www.cineamuse.co.jp/

投稿者 蒼木そら : 2004年10月17日 03:26

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